東京高等裁判所 昭和53年(ネ)936号 判決
≪証拠≫によれば、本件手形訴訟は、被控訴人によって控訴人の代表者を理事渡辺重雄として提起されたことが認められ、かつ、訴状や期日呼出状も右渡辺を代表者とする控訴人に宛てて送達されたことが推認できるところ、かりに右渡辺に真実控訴人を代表する権限がなかったとしても、再審によらずしては本件手形判決の確定判決としての効力(既判力、執行力)を否定することはできないものというべく、たとい右が、被控訴人において、右渡辺その他僣称理事と馴れ合って真実の代表者の訴訟関与を妨げるべく作為したものとしても、これを以て請求異議の訴の異議事由とすることはできない(最高裁昭和四〇年一二月二一日判決、民集一九巻九号二二七〇頁参照)。もっとも右の作為が不法行為を構成することの有無は別に問われなければならないが、かりに不法行為として損害賠償請求権が肯認される場合であっても、控訴人が本件請求異議の訴の異議事由として、この債権と本件手形及び小切手金債権との相殺による後者の消滅を主張することは許されない。何となれば、かかることが許されるとするならば、債務名義である確定判決の権利が金銭債権である場合は、該確定判決が騙取されたとさえいえば、常に請求異議の訴が可能となり、これが実質上再審と同様の機能を営むに至ることは見易い道理であって、確定判決の成立過程における重大な瑕疵の問い直しを排他的独占的に委ねられている再審制度の存在意義を没却する一方、確定判決による権利の実現である強制執行の遅延を当然に結果することとなるというべく、その不合理を看過することはできないからである。
(林 高野 石井)